田中慎樹メモ

ネット広告、ビジネスモデル、ベンチャー、経営、日常について

広告と投資

織田さんのインタビュー。1年半ぐらい前の記事に先ほど出会いました。

アメリカの広告主はいまやベンチャーキャピタルみたいなもので、100あるうちの10ずついろいろなキャンペーンに試してみて、いいものについては他をやめて予算を投入する。昔だと例えば100ある予算のうち一つのキャンペーンで80をテレビにドカーンと入れて、残りをちょこちょことやっていたのに対し、いまはテストをしながら、キャンペーンを成功させていくというモデルに変えつつあります。

――なぜアメリカではそういった変革が起きているんでしょうか。

日本だとなかなか失敗できないじゃないですか。
アメリカでは、失敗すると首が飛ぶ人たちもいるけれども、同時に失敗しないと進まないというのも分かっている。100ある予算を10に分けて、10個の馬に賭け、それをポートフォリオとして見る。映画も同じですが、10本つくって1本成功して、残り3本がとんとんだったりする。マーケティングも似たような話になってきて、消費者がどんどん変わりつつある中でテレビだけに8賭けるというのは、非常にリスクが高いと思われる。
彼らがいつも言うのは、例えば「予算の10%なり5%なりをテスト的なものに使っていきたい、それが成功したらどんどん予算をシフトしていって新たなマーケティングチャネルとして使っていきたい」ということ。

「予算を100投入して、結果が110になることはあり得ない。3になるか、30になるか、300になるか、3000になるか。 広告は費用ではなく投資。」という話はウェブだけに限って考える必要はなく、マスも含め全体で捉えている企業はある、という話。
そう、10本中、1本成功して3本とんとん、残り6本は紙くずに消える、という感じであればまずまずの成果ですね。この打率だとなかなか悪くない。全体で見ると、金融の投資家が金融市場で勝つよりも、広告担当者が広告市場で勝つ方が機会は多そう。
ただ、ある手法で広告投資をお試しするにも、ある程度まとまったリソース(資金/知恵/時間)を張り込まないと、潜在的に得られる可能性のある成果を見通せないのは金融投資と一緒。これが大変なところだなぁ。

「負ける」こと

建築について

独創的であると同時に、社会に受け入れられる建築を作るため、隈はある流儀を貫き通している。それが“負ける”建築。
“負ける”建築とは、自己主張するのではなく、周囲の環境に溶け込むような建物を建てること。さらには、予算や敷地などの「制約」を逆手にとって独創的な建物を生み出すことを指す。

「予算や敷地に制約がなかったらどうしますか?」と尋ねられた隈は、こう答えた。
「制約がなかったら制約を探しに行くな。(中略)まさに宝ですよ、制約は。」

建築を進める中で、隈が大切にしているのが、最初のコンセプトを貫き通すこと。さまざまな制約の中で、素材や形を変える必要があったとしても、発想の“根”は譲らない。

とても沁みる言葉です。
制約を逆手に取って生み出すことは創造することであって、パズルのピースを埋めていくような淡々とした作業とは違う、と感じます。

広告と媒体について

リーチは広いが、効きは弱い、関与度低い、ターゲティングできない、15秒しかない、、、そんな、最末端、最周辺メディアだと、TVCMを捉え直すと、逆に出来ることが、拡がると思った。

リーチは広くない、”成果”は測定できるが軸が限定的なため過小評価される、「ぎょっと」させてはならない、誰でも引用でき悪評がつく可能性を拭えない、、、 そんなメディアだと捉え直すことで、逆にインターネット広告にできることはありそうそうです。

電子チラシにYahoo!も参入

紙のチラシはその殆どをすぐにゴミ箱行きにするという生活をしている身としては、資源を消費している気がしていかにも勿体ないので、広告情報のデジタル化が進むことは個人的には歓迎です。

ヤフーと凸版印刷は4日、電子チラシ事業において業務提携を締結し、3月下旬よりYahoo! JAPANにて「Yahoo!チラシ情報」の提供を開始すると発表した。

 Yahoo!チラシ情報は、インターネット上で折込みチラシを閲覧できるサービス電子チラシサービスで、Yahoo! JAPANが運営を行ない、凸版印刷が広告代理業務や電子チラシの制作、電子チラシデータの提供を行なう。凸版印刷が運営する電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」と提携し、Shufoo!に登録されている企業や店舗のチラシをYahoo!チラシ情報で閲覧できる。

 また、チラシ情報は住所や店舗名、ジャンル、都道府県から検索可能なほか、お気に入りの店舗や地域を登録することもできる。なお、Yahoo!チラシ情報のサービス開始に向けて、すでにイトーヨーカ堂とイオンのチラシ掲載が確定しているという。

凸版印刷が思い切った手を打ってきました。Y!の集客力を梃子に利用を拡大する意向です。
この手の事業は多分、「営業が先、集客が後」ということがセオリーかと思います。せっかく集客しても多くの人が求める情報がなければすぐ離れてしまいますので。
さて、Shufoo!に多くの人が良いと感じるようなチラシは集まるでしょうか? イトーヨーカ堂やイオンといった超大手小売業が入っているのは◎。ただ、両者は凸版印刷まで各種業務を発注していて既に営業ルートがありそうです。
電子チラシの良さは、地域に根ざす店が広告・販促情報をその地域の(新聞を取ってない)住人にセグメントして届けるところにあるとすると、営業はリクルートの方が強そう。リクルートのタウンマーケットhttp://townmarket.jp/)の方が若干有利な気がします。


あと、一気に場をひっくり返すことがあるとしたら、基地局情報・GPSから位置情報を利用できる可能性のある携帯キャリアが参入することでしょう。これほどメール・ウェブ含め携帯の利用が進んでいると、そろそろ頃合いだと考える人もいるかも知れません。 主な広告主となりうる小売業などの人たちは日銭商売である性質上非常に忙しく、紙のチラシの高精細コピーではなく電子チラシ専用の広告情報を作ってくれと依頼するのはなかなか大変だと思いますが、携帯ほどのリーチ・集客力があるととても魅力がありそう。。。

花粉症が流行し始めたらしい

先週ぐらいからでしょうか。はてなダイアリーでも「花粉症」という言葉を含む日記が増えてきました。

http://d.hatena.ne.jp/keywordstats/%b2%d6%ca%b4%be%c9


なお、私自身は花粉症にかかったことがありません。学生時代、毎週のように京都の北山に行ってさんざんスギ花粉を吸ったはずなのに。一緒によく行っていた仲間も花粉症に罹っている人はとても少ないです。何故なんだろう。

Googleのピークは終わるのか?

Silicon Alley Insiderのブログ記事“Google Disaster: Comscore Reports Awful January”で,Google広告のクリック効果(paid click performance)が伸び悩んでいると伝えたから大騒ぎになった。これはcomScoreのデータをいち早く伝えた記事である。
 昨年11月から今年1月までの各月のGoogle click growth (comScoreによる前年同月比データ)は次のようになっている。
October: 37%
November: 27%
December: 12%
January: ほぼフラット

昨今のGoogle株価下落は、「paid clickの数が今年の1月と去年の1月で増えなくなった」ということが大きな要因とのこと。確かに、10月は前年比で37%増であったということと比べると、その3ヶ月後の増加率0%という数字は衝撃的です。
ただ、GoogleGoogle's Efforts to Reduce Accidental Clicks Could Cut Ad Revenues - TheStreetで紹介されているように、テキスト広告のうちクリックできる範囲をリンクとURLに限定するなどの施策も打ち始めています。これは、購入意向もないのに広告を誤ってクリックしてしまった、というような誤クリックが起こる機会を減らし、本当に関心のあるユーザーだけが広告主のサイトを訪れるようにすることで、広告の費用対効果を上げるための施策です。短期的に見ればクリック数は減るので、主な課金体系をクリック課金としているGoogleは広告主に請求できる金額も減ってしまいますが、長期的に広告主をつなぎ止め信頼感を獲得し続けるには避けがたい道だと思います。
単純にクリック数だけ見て財務的にstrongだweakだ企業価値が●%失われているという分析は株屋さんに任せて良いのでは。Googleは現金も十分保持しているし、取り組んでいる内容について当面変更はないと予想します。 少なくとも、Google創業者の2人が優先的な株主であるという状態は、会社の姿勢がブレにくそうだという印象を与えるので、株価が調整段階である時にこそ競合他社よりも強みを発揮しそうだと言えそうです。


中期的に見てGoogleの検索広告事業にとって重要なのは、Googleの広告がOvertureや他のディスプレイ広告などと比べ、広告主にとってより良いパフォーマンスを出し続けられるよう努力を続けることだと考えます。
広告関係者である私としては、誤クリック対策以外にも、販売・費用対効果管理手法の改善(掲載できる面を選べないのか、時間帯配信/地域配信は利用できないのか、第三者によるスパムクリックを防げないのか、・・・)や商品の進化(認知効果を説明できるような商品やサポートするデータは用意できないのか、video ads(YouTubeの動画広告)はまだ正式リリースしないのか、・・・)の方に興味を持って見つめています。

追記(3/3)

クリック数が減ったのは、やはり、「クリックできる範囲をリンクとURLに限定するなどの施策のためでは」という意見が出ましたね。

スペイン、海のそばのホテルでの会話

アメリカ系経営コンサルティング会社に所属する日米欧のコンサルタントたちが、研修名目でスペインのホテルに集まった際にランチタイムで交わした会話。


アメリカ「スペインって海も綺麗だし飯も旨いしいいねえ」
ドイツ「ヨーロッパの中でも物価がかなり安いからショッピングに来たよ、バーゲンバーゲン」
日本「しかしホントに昼間に店、閉まってるな。シエスタっていいよな」
フランス「うん、おまえらスペインのコンサルタントもどうせ13時から16時まで休んでんだろ」
スペイン「ばーか、さすがにそれはない。銀行とかがシエスタとるわけにいかないだろ」
日本「クライアントを差し置いて休憩することができない事情は、コンサルタントならどこでも一緒か」
スペイン「ランチは12時から13時まで。まあ”コンサルタントランチ”と呼んでるけどな」
アメリカ「”コンサルタントランチ”って、サンフランシスコ事務所ではPCの前でサンドイッチを頬張っておしまいにするという意味だけどね」


スペイン「ところでサマーバケーションはどこ行くものなの」
ドイツ「同僚はイタリアが多いかな。やっぱ海行きたいものね」
アメリカ「俺らはカリブ海。あと西海岸のやつはNYに。東海岸の奴はLAにいくとか。」
フランス「長いバケーション、同じ国にいて飽きない?おまえら意外と飽きっぽくないんだね」
アメリカ「えっ?バケーションって長くないだろ?コンサルタントは忙しいものなんだからしょうがないじゃん」
ドイツ「何いってんの?5週間あるじゃん」
アメリカ「嘘?おれら2週間しかないぜ?」
スペイン「まじで?スペインの事務所は5週間あるよ」
フランス「フランスの事務所も5週間」
アメリカ「えー、同じ会社でも事務所毎に休みが違うのか・・・」
ドイツ「アメリカって大変だな」
アメリカ「日本はどうよ、日本は」
日本「・・・」
ドイツ、フランス、スペイン「日本はどうなんだ?」
日本「サマーバケーションなんてない。ゼロ。更に言うと、有給休暇は年に12日しかねえ。。。」
アメリカ、ドイツ、フランス、スペイン「・・・(絶句)」



「ミツキ、おまえせめてアメリカの事務所に移れよ、、、」と真剣に言われたのを思い出しました。実話です。彼我の労働文化は大きく違うものだと感じました。


参考: