田中慎樹メモ

ネット広告、ビジネスモデル、ベンチャー、経営、日常について

「分散型メディア」概念はただの方便だった

さまざまな事象が進行しているが、俯瞰してみると、デジタルパブリッシングが多角化に失敗し、すべてを広告に依存していることがわかる。その後、プラットフォーム企業が広告に乗り出した。いまではデジタル広告支出の大半がごく少数のテクノロジー企業の手に渡り、パブリッシャーはわずかな残り物を争っているにすぎない。Facebookは別のやり方でもパブリッシャーを苦しめている。パブリッシャーへの参照トラフィックを減らし、マネタイズの支援をパブリッシャーがFacebookに投稿した動画に限定しているのだ。収益はあとからついてくると考えて分散型戦略を採用したパブリッシャーは、そうではなかったことに気づいた。

上記記事にも若干触れてありますが、私は「分散型メディア」概念はただの方便で、パブリッシャーのビジネス構築には概ね役に立たなかったと理解しています。Facebook/ YouTube/ Instagramというプラットフォーマーを太らせるだけに終わる予感をひしひしと、身に沁みて理解しつつあるパブリッシャーの方もかなりいらっしゃるのではないでしょうか。


勿論パブリッシャーの一部の方々もそうなりそうなことは重々承知で、表向きに「分散型メディア」を推進・賞賛しつつもそれはプラットフォーマーにアクセス配給を優遇されたいという狙いであって、裏では必死で自社アプリ・自社メディアへの誘導を図っていたりしたのだと思います。が、多くの事例でうまくいかなかったね。という結論になりつつある。


古い話で恐縮ですが、私は、Facebookがソーシャルアプリ(ゲームアプリ)の雄として台頭し、独自のゲーム経済圏を作りかけていたZingaを、Facebook内でのアクセスを絞ることで実質的に葬り去ったことを忘れていません。Facebookの意図は今となっては分かりませんが、いずれにせよプラットフォーマーはパブリッシャーに対してシビアな目線を持っているといえるでしょう。


当社サービス( はてな)でも、もちろんFacebook/ Googleといったプラットフォーマーとの付き合いは大事ですが、テキスト主体のUGC (User Generated Content )サービスなので、自前コンテンツ制作ありきの一般パブリッシャーと比較してコスト負担が重くなく、彼らほどのめり込んで投資回収に焦る必要がありません。コンテンツを発信したくなる個人に寄り添うことをひたすら続けていれば大きくなるし、ユーザーの成熟・全年代への浸透というトレンドは追い風です。追い風は突風ほどの強さはありませんが、着実に歩んで参ります。