田中慎樹メモ

ネット広告、ビジネスモデル、ベンチャー、経営、日常について

バイラルメディアがアクセスを落としている理由(推定)

北米のメディアアクセス動向について良い記事をまとめていただきました。zen.seesaa.net

UpworthyからBuzzfeed、Elitedailyまで新旧バイラルメディア動向が拾われてます。
バイラルメディアがアクセスが落とされてるのは、記事でも触れられてますが、要は

  1. 過当競争
  2. Facebookからの締め上げ
    • instant articlesが採用されるよう圧力
  3. Googleからも誘導が絞られる
    • 一次情報サイトへの誘導力を高めるため。要は新聞系メディアやブログ
    • instant articlesに移行する世界はオープンウェブを貧しくするので本体サイト、オリジナルコンテンツを優遇

の3つじゃないですかね。
と思いました。

Amazon Japanについて

昨日、プライム会員向けに追加料金無しで「プライム・ビデオ」サービスを提供するというニュースが話題になったようです。toyokeizai.net



この記事を遅ればせながら今朝読んで、ニュースの核心部分と関係ない一節に目がとまりました。

アマゾン・ジャパンのジャスパー・チャン社長は「現在プライム会員の方にビデオを楽しんでもらうだけでなく、『ショッピングはしないけれども動画が好き』という方を取り込んでいきたい」と狙いを語る。

アマゾンの動画配信は、掟破りの「実質無料」 | インターネット | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

あまりメディアに出ないジャスパー・チャンさんの名前を目にしたのは久しぶりです。それにしてもジャスパーさん、アマゾン・ジャパンでの社長歴、長いなあ!2001年ぐらいからじゃなかったですかね。外資系、特に独特のカルチャーがありそうなAmazonのなかで、一国の担当の社長が変わらないってのはそれだけですごいですね。
Amazon Japanの運営にはアメリカAmazon.comとの関係をどう保つかという点で独特の難しさがありそうです。Amazon.comの展開サービスのうち、どれをamazon.co.jpに取り入れていくか。また、国土の大きさや物流網の違いや小売業者の振る舞いの違い・USにはあまりいないモール業者といった競合の存在をいかに上手く説明して日本の独自戦略を認めさせるか。などなど。
にもかかわらず、日本で順調にAmazonのサービスがシェアを伸ばしてきているわけです。これは、Amazon Japan(amazon.co.jp)のサービス展開がブレてこなかったし、日本の環境に合わせてサービス拡充に取り組んで来たということの現れだと思うのですが、その影の貢献としてトップが安定しているということを想像しました。

Circaの停止に寄せて

Circaの停止について書きかけてはやめる、を繰り返してることに気づいたので、いい加減にしてさらっと書くことにする。
 
(Circaとはアメリカのスタートアップが取り組んだニュースリーダーのプロジェクトです。この記事が特徴をよくまとめてます。)
(7/8追記・ちょっと補足します:Circaにはビジネスが導入されなかった。ニュースリーダーだからビジネスモデルは広告か課金が普通だろう。比較的容易なのは広告で、読者=ユーザーが大量につけばなんとかなる。それでチームはユーザー獲得に専念した。Circaのプロダクトの出来は業界の人を驚かせ、感心させるのに十分だった。しかしその評判とは裏腹にユーザー獲得スピードは芳しくなかった。Circaのチームはサービスの一層の磨き上げに加え、独自の編集チームを構成してニュースの選定に力を注ぎ、魅力的なメディアの創出のために取り組んだ。プロダクトに全力で取り組んだはずだ。しかし結果としてCircaは死んだ。)
 
 
なぜCircaは死んだか。ドライに捉えると単純な話だ。ユーザー獲得スピードが遅いことが分かった時点でピボットすべきだった。「大衆向けコンテンツ」への対応を真っ先に深堀りしたくはなかったならば、プラットフォーマなりインテリメディアなりに売却するべきだった。(SummlyはYahoo!に、WaviiはGoogleに、PulseはLinkedInに売却した。)どれも嫌でどうしてもあと数年プロダクトに専念したいのなら、膨大な夢を詰め込んだ絵を描いて超大型調達をすべきだった。でも、いずれも実行しなかった。
結局、半端な調達、甘いビジネスプラン(特にユーザー獲得プラン)、フォーカス分野の誤りが死を招いたというわけだ。シンプル!
 
 
とはいえ、スマートフォンでのニュースリーダーの原型を作って一世を風靡したのになあ。プロダクトを磨き上げることに拘ることは善であるという思いは自分にもあるんですが、それが死につながったというのがどうにも切ない気分です。
 
 

Mary Meekerの年次調査プレゼン「Internet Trends」

「Internet Trends」、今年も発表されました。
Mary Meekerはモルガン・スタンレーの元セルサイドアナリスト、別名「ドットコムの女王」。今はベンチャーキャピタルKleiner Perkinsに所属。


TechCrunchが上手に資料の抜粋版を作ってくれています。こっちのほうがざっと読めます。techcrunch.com


全ての資料を読みこなしたい人はこちらから。


ただ、Meekerは上手なアジテーターであって、インターネットで何が起こっているか鋭いエッジを表現することに長けた人でもあります。エッジだけ見ても本当のトレンドは分からないのですね。トレンドを理解するためには、去年は「この先どうなるだろう」と思ってたか、その内容のうちどこが継続でどこが外れたか。その要因は何かを見通すことが必要です。
幸いにしてMary Meekerのキースライドはフォーマットを全く変えません。だから、去年と資料のどこが差し替わってるかを把握することがホントの「Internet Trends」把握方法ですよ。おすすめ。
(去年のスライドは下記の通りです)

オウンドメディアマーケティングの最前線について。セミナーの感想

先日、はてなで開催したオウンドメディアに関するセミナーについて、ライフネット生命保険ライフネットジャーナル オンライン)、デサントコンプレッションウェア)、サイボウズサイボウズ式)というフロントランナーの皆さんから興味深い話を伺うことが出来ました。

business.hatenastaff.com



ライフネット生命保険の取り組みの紹介(岩田さん)

当初はKPIをPV指標で設定していましたが、途中からUUと閲覧時間を重視する方向にシフトした

モデレーター、藤代さん(ガ島通信)のコメント

「組織や部門によってオウンドメディアの目的にはバリエーションがあるはず。メディアやゴールを変えることでいろんな答えがあると思います」

感想その1:ムーブメントの初期段階だな

お金と労力というリソースを投下するので、マーケティングのROI計測の枠組みを厳密に決めたいところだけれど、なかなか難しいよ、やってみないと分からないところがあるよ。という印象を受けました。
つまり、この分野では、まだ勝ちパターンが決まり切っていない。典型的な、サービス/ムーブメントの初期段階です。これが見極められるまで待つというのが、慎重で思慮深い選択肢です。どのプレイヤーもオウンドメディアにいま取り組む必要は無い。
ただ、自分の経験上、こういうネットがらみの新しいムーブメントは、アーリームーバーほど、得られた場合の果実は大きいものです。(アーリームーバーであれば必ず成功するわけではないのが難しいところですが。) それが直観的に分かってるからこそ、ネットと事業が直結している、いわば「ネット業界」のライフネット生命保険さんやサイボウズさんがどんどん取り組んでいるのでしょう。




そのなかでデサントさんの取り組みがフィーチャーされていることは興味深かったです。

デサントの取り組みの紹介(加勇田さん)

加勇田さんは営業にいかに武器を持たせられるかを考え、販促に必要なファクト作りの手段のひとつとしてオウンドメディアを展開。自社の営業と、商品を導入してくれる企業のバイヤーや担当者の3PVがあればいいと言い切るレベルまで、記事を見てほしい対象を絞り込むことを徹底しました。

感想その2:オウンドメディアは、取引先とのコミュニケーションに効く。これは手堅い

3PVがあれば良いとまでターゲットを絞り込むことが可能であれば、メディア運営もよりイメージがつけやすいでしょうし、成功確率が上がります。
一般にB2Bの取引は営業と取引先が密にやりとりされているでしょうから、それを支援することを考えることは良いヒントだと思いました。また、先ほどのアーリームーバー考え方についても、世間のトレンドではなく競合候補よりも早く動いて早く学ぶ、という発想をすると動きやすそうだと思います。


はてなは「はてなブログMedia」というオウンドメディア支援のサービスを提供しています。ご興味があれば下記リンクないしは私まで直接お問い合わせ下さい。hatenablog.com

ブルーボトルコーヒー進出を紹介する記事を読んで

単なる感想であり日記です。今度行った時に読み返してみよう。

ブルーボトルコーヒー東京進出は成功するか?アップルと真逆のビジネスモデル - 週アスPLUS

  • 東京のハイクオリティコーヒー環境は世界一だと思うし、品質と居心地良さで勝負して突然大きく成長するイメージは湧かない
  • 年3-5店舗ぐらいでじっくり増やす隙間はあるだろうし、それで5年頑張ってから大きく勝負するかどうか考えては如何か
  • 割高ではないと書いてるけど、プライスリーダーシップをとるのではないなら、結局良いイメージの提供やライフスタイル提案で勝負するしかない。だったら、記事で比較すべきはアップルではなくレッドブルだと思う