オリンパスの不正会計を告発し解任されたウッドフォード氏の”暴露本”『Exposure』への書評を見かけた。EconomistとFT。
Exposure: Inside the Olympus Scandal: How I Went from CEO to Whistleblower
- 作者: Michael Woodford
- 出版社/メーカー: Portfolio Penguin
- 発売日: 2012/11/29
- メディア: ペーパーバック
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- Economistは NB Onlineの翻訳
- FTはJB Pressの翻訳
本の内容は事件のあらましと、日本における会社経営の特殊性を簡潔に指摘したものらしく、大体想像通り。ちょうど事件が騒がれたときにもウッドフォード氏は骨のある人間だと表現されていたように思うが、書評を読む限りでもそのように感じる。
ただ、書評は割とクールというか、むしろ冷ややかな書きっぷりでもあった。英国のビジネス誌らしいトーンなんですかね。
ウッドフォード氏の本は、少なくとも過剰な報酬やよこしまなインセンティブといった他国のコーポレートガバナンスに見られる多くの欠点を考慮していれば、もっとよかったかもしれない。西側の多くの銀行が明らかにせざるを得なかったように、損失を隠蔽するための狂気じみた仕組みに手を染めるのは日本に限ったことではない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36682?page=4
本を読み進めていくと、残念ながらこの著者は今回の一連の問題について、「自分が間違っているかもしれない」などとはかけらも思わないタイプであることに気づく。
それどころかウッドフォード氏は独善的な視点から、自分をサポートしなかった不運な人間たちを責め立てている。この姿勢は、道徳的には正当化できるかもしれないが、本を読み進めていくに従い、違和感は増す。また、ウッドフォード氏は菊川会長及び菊川会長の側に立った人々が当時、何を考えていたかについて考えてみようとはしていない。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121129/240318/?P=2
菊川氏の側に立った彼らにしてみれば、菊川会長は私利を捨てて大企業とその従業員を守っていたわけで、会計上の処理によって実害を被る人はいない、というわけだ。
Economistの結びにしんみりさせられた。僕もウッドフォード氏は正しい行動をとったと思っているが、正義って苦い。ひたすら苦いって感じる。
ウッドフォード氏はリーダーのあるべき姿としては理想だ。ぜひこの書籍を読み、読者は自らに問うてみてほしい。自分なら同じことができただろうか。それとも損失については口を閉ざし、企業経営者の立場にとどまり、経営者が集まる世界経済フォーラムに赴くだろうか、と。
こんな道徳の教科書みたいなテーマが、現代日本の、ビジネスの世界でもあるとはね。