田中慎樹メモ

ネット広告、ビジネスモデル、ベンチャー、経営、日常について

「日本の女性は、美しくない。」

DoveとTSUBAKIという両有名ブランドのキャッチを並べるタイトルが秀逸なので目に止まって、読みました。

内容は主にDoveのマーケティング施策についての紹介です。ポイントとしては、 「リアル・ビューティー」というコンセプトを打ち出し、キャンペーンもそれに沿って、パワーマーケティングではなく一般の生活者に活躍して貰うキャンペーン手法を用いたことです。個々のキャンペーン施策についての紹介については興味深く読みました。
「リアル・ビューティー」という、表層的でない美しさに目を当てるべきだというアピールははっとさせられます。特に、「”既成の”美しさ」が作られる様子をYouTubeビデオで見たときにはぎょっと驚き、そして考えされられたなあと思い出しました。このフィルムはカンヌで賞を取ってますね。

参考: ”Evolution” - Dove

ところで、本当に生活者に充分伝わったのでしょうか

YouTubeの動画を見て、アメリカUNILEVERが美について考えるよう訴えていることは理解したのですが、その他の広告・PRを通して日本のユニリーバがDoveに関して何らかのメッセージを発していたとは、私自身の体験としては感じ取れませんでした。
自分は男性であるし、Doveのターゲットに入っているとは言い難い属性なのでメッセージが届いてないのもかもしれません。だからこそ知りたい。心の内面に訴えかける野心的なメッセージは、本当に生活者に充分伝わったのでしょうか。
イベントや広告に一般の生活者の参加を促し起用することが、例えばそれが「生活者に”新宿駅前で金髪のカツラを投げ捨てるパフォーマンスを行な”ってもらう」ようなサクラめいたことが、生活者の内面に伝えるためのベストな手段だったのでしょうか。それが記事からは読み取れずもどかしく思いました。

Doveというブランド

そもそも、Doveが「既成の美しさを拒否しそれぞれの美しさに目を向ける」というメッセージを採用することはきわどいことです。メッセージに「それぞれ」が入っているために、目を向けるべき分野が急に広くばらばらになったような印象を与えます。生活者それぞれにとっては、服やアクセサリー選びなどのファッションに注目するのも、フィットネスやヨガによる身体への働きかけに注目するのもアリ。一方、Doveはあくまでトイレタリー製品を大量生産・販売しているブランドですから、製品とメッセージが整合しないように見えるおそれがあります。
そこまでリスクを負いながらメッセージを発するには仕掛けが多く必要でしょうし、実際に行ってきた施策は多いでしょう。是非その全貌を知りたいと思いました。簡単には書ききれないと思いますが、分かる方がおられたらお願いしたいところです。

尚、パワーマーケティングを仕掛けたTSUBAKIと比較して始めた記事ですから、マーケティングの結果はどうだったのか知りたいところです。 勝ったのか、負けたのか。また、マーケティングROIとしてはどうだったのか。現在で充分ペイしたと考えているのか、まだまだなのか。メッセージの内容は長期的に通用するものなので育成途中なのかもしれない、とは思いますが。